はじめに
みなさん北欧・フィンランド発祥の「モルック」というスポーツはご存じでしょうか。木の棒(モルック)を投げて番号のついたピン(スキットル)を倒し、得点を競うゲームです。力や特殊な技術などは必要とせず、ルールもシンプルな為、老若男女問わず幅広く楽しめる事が特徴です。 その親しみやすさ(取り組みやすさ)も相まって最近はメディアで取り上げられることも多く、名称だけでも耳にしたことがある方も多いかと思います。現在では世界大会も行われており、日本でも地方大会や、地域のスポーツ大会などでも採用されている等、社会的な広がりを見せています。 当院の精神科作業療法でも、このモルックを昨年度からプログラムの一つとして取り入れ、人気が出てきているプログラムになっています。今回はプログラムの様子を交えながら精神科作業療法についてもお話ししていきたいと思います。

作業療法におけるモルックの効果
作業療法では様々な活動や人との関わりを通じて、病気からの回復をすすめ自分らしい生活を送れることを目指します。モルックはゲーム感覚で参加できるため、楽しみながら様々な効果を得ることが可能です。
1)自然な形で交流が生まれる
モルックはチームで得点を競うゲームです。ゲーム中にチーム内で作戦を協議したり、チームメイトを応援する場面が多く、コミュニケーションがうまれ、顔なじみが出来たりします。
2)認知機能を刺激する
ゲーム性を楽しみながらも、戦略を立てることが必要となり、集中力のUPや計算(逆算)が行われます。
3)年齢・運動能力を問わない
モルックは車椅子の方でも誰でもが参加でき、また遠くのピンを狙いながら体を動かす事で力のコントロールやバランス能力の向上が図れます。
4)ルールがシンプルだがゲーム性、戦略性が問われる
チームでの交流や戦略的な思考で楽しめます。
5)達成感・爽快感が味わえる
チームとして明確なゴール(50点)があります。狙ったスキットルを倒す、一度に大量のスキットルを倒すことができます。

当院での取り組み
チーム分けを行い、協力しながらゲームを進行しています。チーム内での交流を促すために投てき前に作戦会議をする時間や、どのスキットルを狙うのか等の相談をする時間を設け、投てきする際にはチームの方針としてどのスキットルを狙うのかを宣言しています。また、役割分担として投てき者は投げた後に得点計算と記入を行い、他のチームメイトでスキットルを立てるように声掛け、促しを行っています。
実際に参加された方からは
- 「ピン(スキットル)が倒れると気持ちがいい。」
- 「狙い通りにピンが倒せたらうれしい。」
- 「作戦を立てるのに頭を使うが、やりがいがある。」
- 「チームで勝った時がうれしい。」
等の感想が寄せられています。
今後の展望・可能性
今後はデイケアなどとの交流試合を行い、活動・交流の幅を広げていければと考えています。
終わりに

今回は当院で実施しているプログラムの一つ“モルック”を紹介していきました。モルックは、棒を投げるというシンプルな動きを通じて、思考・運動・対人性を刺激し、回復へ向けた“動き”を生み出すことができる活動の一つです。精神科作業療法という枠組みの中でプログラムとして取り扱うことで、対象者にとって「無理なく楽しみながら意味のある時間」が提供できると考えています。当院ではモルック以外のプログラムも実施しています。お気軽にお問い合わせください。
藍野花園病院 精神科作業療法室

