健康コラム

気づかぬうちの睡眠負債と睡眠薬の話

気づかぬうちの睡眠負債と睡眠薬の話

みなさん、ぐっすり眠れていますか?
「なんだかいつも疲れている」「何をするにも億劫だ」「些細なことでイライラする」「集中できない」「羊が一匹、羊が二匹…眠れない」

もし、1 つでも当てはまるなら、その不調の原因は、”睡眠負債”にあるのかもしれません。
最近よく耳にする“睡眠負債”という言葉、これは慢性的に睡眠が足りていない状態のこと。昼間は仕事や家事に追われ、夜はスマホや動画でつい夜更かし・・・そんな毎日が続くと、知らぬ間に増える心と体をむしばむ眠りの借金。

昼間に強い眠気を感じたり、ミスが続いたり、さらには事故のリスクも・・・。これはもう睡眠負債が生活に影響を及ぼしているサインです。

まずは、生活のリズムや環境を整えることが基本。それでも眠れないときには、睡眠薬を使うことがあります。
実は、睡眠薬にはいろいろな種類があることを知っていますか?
私たちの 1 日は、「覚醒」と「睡眠」で成り立っています。このバランスは、よくシーソーに例えられます。活動的な昼間は「覚醒」が優位になり、夜になるとシーソーは自然に「睡眠」へ傾いていく。このリズムが崩れると、不眠が起こります。睡眠薬は、このシーソーに働きかけて、うまくバランスがとれるようにします。代表的なものをあげましょう。
シーソーの「睡眠」に直接働く薬は、レンドルミンやルネスタなどのベンゾジアゼピン系です。いわゆる「ノックダウン型」、飲めば寝落ちするように効きます。しかし、転倒や薬が無いと眠れなくなるといった依存、薬を急にやめると起こるリバウンドには注意が必要です。安全のために大切なことは、医師の指示を守って服用することです。
次に、シーソーの反対側「覚醒」に働く薬は、オレキシン受容体拮抗薬です。オレキシンとは、柳沢正史博士ら日本人研究グループが発見した、覚醒を維持する体内の物質。この画期的な発見は、世界中で大きな話題となりました。薬はこのオレキシンの働きを抑えることで、眠気を誘います。ベルソムラ、デエビゴ、クービビックといった睡眠薬がこれにあたります。
外からシーソーを動かす薬もあります。体内時計を調節するメラトニンの働きを補うロゼレムです。夜になったら自然に眠くなるのを助けます。

その他、市販薬には、風邪薬や抗アレルギー薬の成分ですが、その副作用である眠気を逆手に取ったユニークな働きの薬があります。

睡眠薬は、不眠というつらい症状を和らげて、睡眠を助けてくれますが、薬だけに頼るのではなく、生活習慣を見直したり、眠りに対する考え方を変えたりすることで、より効果が高まります。
その一部をご紹介しましょう。
 今日からできる! 眠りの質のアップ術
睡眠の見える化・・・睡眠日記で己の眠りを徹底分析せよ。改善は現状把握から始まる。
環境の最適化・・・静かで、暗くて、朝まで適温。最高の眠りのための舞台を整えよ。
寝室の聖域化・・・寝室は眠るためだけの空間と心得よ。スマホやテレビは脳を覚醒させるため断つべし。
悪循環の断絶・・・30 分眠れなければ、潔くベッドを離れよ。焦りはさらなる不眠を招く。
睡眠は、単なる休息ではありません。明日を元気に過ごすための心と体のメンテナンス時間です。
眠れないが当たり前になる前に、ぜひ、あなたの眠りを見直してみてください。

                                             なお、薬の服用については、必ず医師や薬剤師にご相談ください。
藍野花園病院 薬剤部

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