リウマチ・膠原病センターの開設について
この度、2019年4月1日より、当院において『リウマチ・膠原病センター』が発足いたしました。リウマチ・膠原病疾患は、自己免疫疾患(自分の免疫が自身の臓器を攻撃、傷害してしまう病気)のひとつで、関節リウマチをはじめ、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎/皮膚筋炎、シェーグレン症候群、強皮症、血管炎など20種類以上の病気が存在します。
中でも一番患者数の多い疾患が "関節リウマチ"で、約100~150人に1人の割合で発症すると言われています。かつては、この病気を発症すれば、全身のあらゆる関節が痛みと腫れに襲われ、徐々に変形し、やがて寝たきりとなってしまうという恐ろしい病でした。
しかし、2003年に生物学的製剤と言われる注射薬(点滴・皮下注射)が発売されたことにより治療が劇的に変化し、関節変形を未然に防ぎ、寝たきりを予防できるようになりました。
2019年4月現在では、その生物学的製剤も8種類(レミケード、エンブレル、ヒュミラ、シンポニー、シムジア、アクテムラ、オレンシア、ケブザラ)にまで増え、さらに分子標的薬(ゼルヤンツ、オルミエント、スマイラフ)と言われる内服の新薬が発売されております。
加えて、整形外科的治療(関節内注射や関節手術)も組み合わせることで、関節リウマチは完治こそ難しいものの、日常生活の妨げにはならないようにコントロールできる(="寛解"を目指せる)病気になったと言われています。
このような治療の発展、選択肢の増加に伴い、リウマチ・膠原病領域における"チーム医療"の重要性がヨーロッパ、アメリカをはじめ、世界的に提唱されるようになりました。その様な流れの中で、当院でも
② 整形外科
③ リウマチケア看護師
④ リハビリテーション科
の4部門から成る 『リウマチ・膠原病センター』 の発足に至りました。
そして、毎週土曜日には、リウマチケア看護師による『リウマチナース外来』が予約制で行われており、日本リウマチ学会よりソノグラファーの認定を受けたリウマチケア看護師による、関節超音波検査も行っております。
このような恵まれた診療環境の中で、その利点をできる限り患者さんへ還元すべく、より良い専門医療を目指し、今後ともチーム全員で協力・努力していこうと考えています。
また、当センターでは、下記のリウマチ膠原病疾患についても診療を行っております。
全身性エリテマトーデス、多発性筋炎、皮膚筋炎、血管炎(顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、結節性多発動脈炎、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎、IgA血管炎)、全身性強皮症、リウマチ性多発筋痛症、RS3PE症候群、脊椎関節炎(強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、ブドウ膜炎関連関節炎、炎症性腸疾患関連関節炎、シェーグレン症候群、ベーチェット病
リウマチ・膠原病内科 斯波 秀行(センター長) 日下部 暢子 井上 麻由美 |
整形外科 神原 清人(副センター長) 佐藤 敦(主任) |
作業療法士 山岡 裕史 |
リウマチケア看護師 石橋 美佳 山岡 沙織 塩田 晃久 濱田 明彦 |
リウマチ・膠原病について
膠原病は原因不明の自己免疫疾患で、全身のあらゆる臓器を障害します。膠原病疾患には、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、筋炎、強皮症血管炎症候群、ベーチェット病、リウマチ性多発筋痛症など様々な疾患が含まれます。
その中でも関節リウマチは、慢性炎症性関節炎によって徐々に関節が破壊され変形してしまう難病で、ひと昔前であれば関節が破壊され尽くした後、最後は寝たきり状態になる可能性が高い疾患でありました。しかし1999年にメトトレキサート(MTX)、2003年以降では生物学的製剤(点滴や皮下注射)や分子標的薬が本邦でも関節リウマチに対して次々に保険適応となったことで、現在では関節破壊を止めることが可能な時代となりました。当科におきましても、このような最新の薬剤を積極的に使用し関節リウマチ診療を行っております。
<現在、当院にて使用可能な生物学的製剤、分子標的薬>
①レミケード(インフリキシマブ:infliximab)
②エンブレル(エタネルセプト:etanercept)
③アクテムラ(トシリズマブ:tocilizumab)
④ヒュミラ(アダリムマブ:adalimumab)
⑤オレンシア(アバタセプト:abatacept)
⑥シンポニー(ゴリムマブ:golimumab)
⑦シムジア(セルトリズマブ:certolizumab pegol)
⑧ゼルヤンツ(トファシチニブ:tofacitinib)
⑨オルミエント(バリシチニブ:baricitinib)
また、その他の上記膠原病疾患につきましても診断・加療を行っておりますが、重症度や緊急性の高い状態の患者様につきましては、周辺施設および大阪医科大学附属病院リウマチ膠原病内科と連携を取り日々診療しております。
毎週土曜日午前には、予約制となりますが専門のリウマチケア看護師の外来も行っております。担当看護師は『日本リウマチ財団登録ケアナース』、『日本リウマチ学会登録ソノグラファー』であり、"関節エコー検査"も取り入れていることもあり、大勢の患者様に非常に人気の外来です。
膠原病は、関節痛・原因不明の発熱・レイノー症状(指先が冷えると色が真っ白になる現象)・手指の硬化など症状が多彩であり、診断が非常に難しいため専門家への受診が必須の病気と言えます。当科では、まず膠原病の診断およびそれに伴う臓器病変を正しく評価し、各患者様に応じた治療を行うことを心がけております。関節痛や関節腫脹、持続する発熱などがあり、かかりつけの医療機関では診断が難しい場合などの際は、不安のままで我慢せず御予約の上で受診ください。
リウマチ膠原病センター
藍野病院 リウマチケア看護師
リウマチ膠原病 専門看護師について
膠原病の治療は日進月歩の勢いで変化しており、過去の『膠原病は原因不明で治らない難病である。』という時代から、『病気を鎮静化させ【寛解】というものを目指せる』時代となりました。ただし、治療の選択肢が増えた分だけリウマチ膠原病診療は複雑化し、日常生活の注意点や副作用に対する対策など、患者様へのあらゆるフォローアップ、ケアが必要不可欠となっております。
ヨーロッパリウマチ学会からは『看護師は、患者教育や心理面での患者支援、疾患のマネージメントなどの役割を担う必要がある』という提唱(EULAR recommendation)がなされ、アメリカリウマチ学会からは『リウマチ診療は今後医師の診療だけでは不十分となり看護師がその不足を補う』さらに、『看護師主導のケアは患者満足度が高い』という報告もあります。
当院では現在、リウマチ財団登録ケア看護師(リウマチケアナース)9名が在籍しており、リウマチ膠原病チームとして専門性の高い診療とケアを提供できるような体制を整えております。
リウマチケア看護師外来
2016年11月よりは【リウマチケア看護師外来】を開設いたしました。こちらの外来ではリウマチ患者様の日常生活相談、内服相談、自己注射指導などはもちろん、『日本リウマチ学会登録ソノグラファー』の資格を有した看護師による"関節エコー(超音波)検査"によって、関節痛の原因や関節リウマチの活動性の画像評価も行っております。
当外来は完全予約制にて診療を行っております。詳しくは右のポスターをご覧下さい。クリックすると拡大されます(PDF)。
院内勉強会・院外活動
毎月定期的に院内勉強会を開催。専門知識はもちろん、一般的内科的知識、感染症知識、免疫学的知識などについても定期的に勉強会を開催し、また、地域での市民公開講座や、研究会での講演、年1回のまちの保健室でもチーム全員で積極的な活動を行っております。
学会活動
リウマチケアナースとしての学会活動にも力を入れており、日本リウマチ学会主催の総会・学術集会でも2016年以降、毎年演題発表を行っております。先日東京にて行われた2018年第62回日本リウマチ学会総会・学術集会においては、当院看護師が全国他施設の医師が受賞される中、看護師で唯一のベストポスター賞を受賞させて頂くという、非常に光栄な成果もあげることができました。
<発表演題>
- 2016年 第60回 日本リウマチ学会総会・学術集会(in横浜):1演題
- 2017年 第61回 日本リウマチ学会総会・学術集会(in福岡):3演題
- 2018年 第62回 日本リウマチ学会総会・学術集会(in東京):5演題
最後に
患者様は、関節リウマチ・膠原病と診断されたその日から、病気と向き合い不安と戦いながら生きていかなくてはなりません。恒昭会藍野病院リウマチ膠原病チームでは、病気の治療のみならず精神的ケアも含め、患者様の安心した生活の手助けが出来るよう日々邁進していきたいと思います。
リウマチ膠原病ケアナースチーム