藍野病院の認知症への取り組み
藍野病院は高齢者医療の中核病院、『長寿医療センター』を目指しています。
高齢者医療の大きな問題点の一つが認知症であり、当院としても力点を置いている領域です。
2016年現在、日本人口の4人に1人が65歳以上の高齢者、その5人に1人が認知症であり、その前段階である軽度認知障害者(MCI)を含めると4人に1人、
約800万人と報告されています。まさしく『人ごとではない、明日は我が身!』です。
このような時代において認知症の専門診療に求められることは以下の3つに集約できます。
- 1. 認知症の早期診断・鑑別診断
- 2. 認知症に伴う精神症状や行動異常(BPSD)の治療
- 3. 認知症の方に合併する身体疾患の治療
当院は、この3つの使命に全て対応する病院であり、大阪府下でも極めて限られた"オールインワン病院"と自負しております。
『もの忘れ外来』は平日午前午後ともに開設しており、全て予約制です。認知症の早期診断・原因を明らかにする鑑別診断、
さらには認知症状や精神症状(BPSD)の治療を行っており、精神科と神経内科の専門医による2診体制が特徴です。
また、認知症の根本的治療薬の開発治験にも積極的に協力しています。
自宅や施設での介護が困難な精神症状や行動異常(BPSD)については、『認知症治療病棟』での入院治療も可能です。
治療病棟では、当院独自の退院支援パスを用いてBPSDを軽減させ早期に在宅に復帰できるように支援しております。
認知症の方の多くは高齢であるため、同時に身体疾患が発症しやすい年代でもあります。
しかしながら、多くの病院では認知症の方の入院治療に際しての管理が困難なため入院治療を受けられない事態が多発しており、
国レベルでの大きな医療問題となっています。当院では、内科や外科などの一般科急性期病棟のみならず精神科急性期病棟も備えており、
認知症状に応じて使い分けながら身体疾患の内科的、外科的治療に対応出来るのが強みです。
身体科と精神科の専門医が一緒に治療にあたる併診システムで対応させて頂きます。
当院の誇りとするところは、医師のみならず多職種の有志が自発的に参加して活動している『あいの認知症プロジェクト』の存在です。
認知症はまさしく『生活障害病』であり、単に医師のみならず看護師、リハビリ、社会福祉士、心理士、栄養士など多職種による係わりが重要です。
病院内での認知症治療・ケアに留まらず茨木市域全体での認知症ケアのスキルアップや啓発を目的として活動しています。
地域については、医療と介護の高齢者地域連携にも積極的に関わり、後方支援病院としての役割を担っております。
とりわけ、医師会、歯科医師会、薬剤師会や行政、地域の介護スタッフと緊密な連携を基に構築した認知症を中心にした高齢者地域連携システムについては、
構想段階から深く関わり、現在では『茨木市モデル』として全国自治体から注目を頂いております。
当院の認知症診療への意気込みや熱意をご理解頂き、ご活用して頂ければ幸いです。
藍野病院 名誉院長 老年心身医療センター長
杉野 正一